中華人民共和国の衛生事情(伝染病・予防接種)

大都市では高度な医療サービスを提供

首都である北京には、外国人専用の外来を設けている中国系総合病院、先進国と同レベルの最新の医療が受けられる外資系クリニックがあり、その医療レベルも年々高くなっています。

しかし、それに比例して医療費も上昇傾向にあり、特に外資系医療機関では、日本よりはるかに高額の医療費を請求されるケースも少なくありません(緊急入院一日10〜20万円、日本への移送数百万〜一千万円)。

ただし、ほとんどの医療機関は海外旅行者保険が使用できますので、短期の旅行であっても加入はお忘れなく。一方、外資系医療機関がほとんど存在しない地方都市は、十分な医療を受けられる体制が整っているとはいえません。農村部はなおさらです。

中国系病院と日本の病院の大きな違いは、まず最初に窓口で受付料(掛号費)を支払い、診察医を指名(医師のランクにより診察料が異なる)するシステムになっていることです。入院や検査の予定がある場合は、受付時に保証金を要求されることが多く、長期入院が必要と判断されると5万元(75万円相当)程度必要な場合もあります。ただし、保険に加入していればこれらの費用を用意する必要がない場合もありますので、保険加入時にはキャッシュレスサービスが付加している保険を選ぶと万が一のときにも安心です。

気温が上がる5月から10月にかけて、食中毒や赤痢などの経口伝染病、ウイルスや細菌で汚染された食べ物による感染性胃腸炎(下痢症)が多く見られます。一流のホテルならば衛生状況が良いため問題ありませんが、それ以外の場所で野菜や果物、乳製品、魚介類、肉などは食べるときは、生のものは避けるようにしましょう。また、生水を直接飲むことを避けるのも重要な予防対策です。

なお、都市部では食品への安全意識が高まり、また冷凍設備の普及により衛生事情は急速に改善されていますので、必要以上に心配する必要はありません。感染性胃腸炎の多くは十分な水分補給と整腸剤の服用で数日もすれば回復しますが、激しい嘔吐、血便などの重症化が認められた場合には、医療機関を受診して医師による専門的な治療を受ける必要があります。

大都市では非常に稀ですが、内陸部では虫卵に汚染された生野菜を食べて、回虫、蟯虫、鞭虫等の寄生虫に感染するケースがあります。ただし、化学肥料と農薬の使用が普及した現在、寄生虫疾患は大幅に減少しています。むしろ、野菜等は残留農薬が問題となっていますので、良く洗うことを心掛けるようにします。

蚊を媒体としたマラリアも発生しており、その約85%は海南、雲南、湖北、貴州、四川、広東で発生しており、なかでも海南、雲南の2省は最も発生率が高くなっています。ただし、マラリアのリスクが生じるのは標高1,500m以下の地域に限られますので、上記各省すべての地域がマラリアに汚染されているというわけではありません。旅行者は出発前に対象地域の情報を入手して、防蚊対策などの予防対策を講じるようにしましょう。

次に性感染症についてですが、全国の死亡数ワースト1はエイズとなっています。HIVの感染経路としては、血液を介する場合(違法薬物の静脈注射、売血など)と性的接触の場合が大半を占めています。中国の医療機関でHIV陽性の確定診断がつくと、政府報告、隔離措置がとられることがあります。淋病や梅毒などの患者も多いため、帰国後に病院やクリニックで診察を受けるなど、健康状態に十分な注意が必要です。性感染症は初期は無症状の場合が多いですが、クラミジアや梅毒などは不妊の原因となる病気となっており、梅毒はHIVの感染リスクを増大させるので、男性・女性を問わず注意が必要です。

近年、急増して特に注意が必要なのは狂犬病(発病すると致死率はほぼ100%)で、北京市内といった大都市でも感染例が報告されてきました。動物に接する可能性が高いと前もってわかっている場合、前もってワクチン接種を受けるようにしましょう。狂犬病という名前に反して、ウイルスを持っている動物は犬だけではありません。また、傷口を舐められただけでも感染リスクがありますので、できるだけ動物には近づかず、もし咬まれたりした場合は早急に医療機関を受診しましょう。

2002年、コロナウイルス属の一種である、SARSウイルスによって引き起こされるSARS(重症急性呼吸器症候群)が広東省で発生、8,098人が感染し、774人が死亡したことから大きなニュースとなりました。最近は新たな患者発生はありませんが、リスクがゼロになったわけではありません。38度以上の高熱、呼吸器症状、悪寒、筋肉痛、頭痛、下痢などを伴った場合には、医療機関を受診するようにしてください。